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第9回溶接雑学講座

皆さんこんにちは!
合同会社Levi’s商会、更新担当の中西です。

 

さて

~確認事項~

ということで、今回は、溶接業における事前確認事項を、実務目線で深く解説いたします。

 

安全・品質・効率を守るための“段取り前の段取り”

溶接は、製造業や建設業において「構造を支える」重要な工程です。
鉄骨や配管、橋梁、船舶、機械フレームなど、あらゆる分野で使用されており、
一つの不良が
重大な事故や大規模な手戻りにつながる可能性もあります。

だからこそ、溶接作業においては、「作業前の確認」が極めて重要です。


✅ 図面・仕様の確認

 すべては「正しく読む」ことから始まる

溶接作業の第一歩は、設計図や溶接指示図を正確に読み解くことです。

🔍 確認すべきポイント

項目 確認内容
溶接記号 種類(突合せ/隅肉など)、サイズ、長さ、角度
溶接部位 部材の取り合い位置、交差点、継手の種類
材質情報 母材の種類と強度(SS400、SUS304等)
溶接方法 アーク溶接/TIG/MAG/スポット等の指定
溶接順序・工程 歪み防止のための指定順序の有無

📌 「勝手な自己判断」で施工すると、強度不足・歪み・クレームの原因になります。


🧱 母材・溶接材料の確認

適材適所を守らないと、構造不良につながる

✅ 母材(ベースメタル)の確認

  • 材質、板厚、表面のサビ・油・汚れの除去状況

  • 異材溶接(例:鉄とステンレス)時の注意点

✅ 溶接材料(ワイヤ・電極・ガス等)の確認:

材料 確認事項
溶接棒・ワイヤ 材質の適合、保管状態、ロット管理
保護ガス 種類(CO₂/Ar混合)、流量、ボンベ残量
フラックス(被覆材) 湿気による性能低下がないか
乾燥処理 低水素系電極は事前の乾燥が必須(300〜400℃)

📌 材料が正しくても、管理が甘いと品質不良が発生します。事前点検は怠らずに。


🧯 安全設備と作業環境の確認

 人命を守るための“必須条件”

溶接作業には、高熱・強光・火花・有毒ガスといった多くの危険要素が含まれます。

✅ 作業前の安全確認項目

項目 内容
火災防止 可燃物の撤去、消火器・水バケツの設置
換気設備 排気装置・フードの稼働確認(ヒューム対策)
保護具 溶接面、革手袋、防炎服、安全靴、耳栓など
アース接続 接地状態の確認と漏電防止
足場・作業姿勢 高所作業時の墜落防止、安定した体勢確保

📌 現場での事故の多くは、「当たり前の確認を怠った」ことが原因です。


🧰 設備・工具・機器の事前点検

 施工精度と安全性の両方に直結する工程

✅ 点検すべき機器

設備 点検内容
溶接機本体 通電、表示パネル、異音・異臭の有無
ケーブル類 断線・焼損・接触不良
トーチ・ホルダ 消耗品の状態、ノズルの詰まり
ガス調整器 圧力計の動作確認、漏れの有無
グラインダー・ケレン機 回転ブレ・砥石の摩耗状態

📌 機器トラブルによる作業中断は、生産性だけでなく安全リスクも高めます。


🔎 溶接技能・資格の確認

 誰が作業するかで、仕上がりは大きく変わる

溶接作業には、資格が必要な作業と、誰でもできる作業があります。

✅ 確認するべき項目

  • 作業者の溶接技能資格(JIS Z 3801など)の有無

  • 指定された施工方法に対応した資格範囲内か

  • 特定建設業ではWES、AW検定、ボイラー溶接士等の資格証明の提出が必要なケースあり

📌 無資格者の施工は、重大事故や元請けからの指導対象になることも。


📝 施工管理と検査体制の整備

品質トラブルを未然に防ぐための「管理の目」

事前に品質管理・工程管理のルールを確認し、現場での迷いや属人的判断をなくします。

✅ チェックポイント

項目 内容
WPS(溶接施工要領書) 許容電流・速度・前処理・後処理が定義されているか
PQR(溶接施工試験記録) 検査結果の記録とトレーサビリティの確保
外観検査・寸法検査 作業後に即チェックできる体制があるか
非破壊検査(RT/UT/MT/PT) 必要な検査項目と実施手配は済んでいるか

📌 検査体制は、顧客・元請けからの信頼に直結します。準備は万全に。


✅ 溶接は「段取り命」の仕事。事前確認が品質と安全を支える

溶接作業においては、「実際の作業時間」よりも、事前準備や確認作業の質が最終結果を左右します。

✔ 図面と仕様の確認
✔ 材料と母材の適合性
✔ 作業環境と安全対策の徹底
✔ 機器点検と技能の確認
✔ 品質検査の体制構築

これらを抜きにした「いきなり施工」は、事故・不良・やり直し・信用喪失の元です。

溶接は、“火花の裏に設計と管理がある”
そのことを、すべての技術者が忘れてはならないポイントです。


📋 溶接業の事前確認チェックリスト(保存版)

分類 チェック内容
図面 溶接記号、位置、順序、材質の読み取り
材料 溶接棒/ガス/母材の適合、保管状態
安全 火災対策、換気、保護具、足場確認
設備 溶接機・トーチ・ガス系統の点検
人材 資格者の配置、技能証明、健康状態
品質管理 WPS・PQR・検査手配・測定機器準備

 

 

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